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設備の老朽化・利用者の減少などの理由で、2024 年 1 月にサービスの終了が発表されている
「 ISDN 回線」。個人での利用者は減少している一方、現在もなお、
多くの企業が利用しているのをご存じでしょうか。
ここでは、 ISDN 回線終了が企業に与える影響や、必要な対策を解説します。
目次
通信機器や企業間データのシステム化に伴い、多くの家庭や企業に利用され、日常生活を支えてきた「 ISDN 回線」。仕組みや、回線サービスが終了になるまでの歴史をご紹介します。
「 ISDN 回線」とは、 NTT 東日本・ NTT 西日本が提供するアナログ回線を使用した「デジタル通信網=( INS ネット)」です。対象サービスは、大きく分けて 2 種類。電話・ FAX などに利用できる「通話モード」と、パソコンや専用端末などからデータ通信が可能な「デジタル通信モード」です。
料金は定額制で、 1 回線の契約で、電話・ FAX /データ通信の 2 回線分を同時に利用できるとあって、 1990 年代から個人・法人ともに利用者が急増したサービスです。 1 回線で電話 23 回線分が利用できるビジネス向けプランもあり、企業にも積極的に利用されています。
INS ネットの「デジタル通信モード」を利用して事業を展開する企業の中には、日常生活に直結するサービスも数多く含まれます。例えば、銀行 ATM や POS システム、レセプトオンライン請求などです。
1990 年代後半から 2000 年当時、電話・ FAX ・データ通信を定額で利用できる「 ISDN 回線」は画期的と言われ、利用者が急増していました。
しかし、近年ではさらに高速な「光回線」サービスが登場し、家庭内では一人1台スマートフォンを持ち、複数のパソコンを使用する環境へと変化しています。これにより、個人契約での固定電話や FAX の使用率は大幅に減少、ISDN回線の利用も併せて減少傾向となりました。
現在は、複数のスマートフォンやパソコン、プリンターなどのデータ通信を全てカバーでき、料金の安い「光回線」の利用が増えてきています。
NTT 東日本・ NTT 西日本では、これまで「 ISDN 回線」で使用されていた公衆交換電話網(PSTN)によるデータ中継/信号交換機が、 2025 年頃に機能維持の限界を迎えると発表しています。
今後は、データ中継/信号交換機を IP(=Internet Protocol)化し、設備の切り替えを行っていくこととなります。
これにより、これまで ISDN 回線を利用していた加入電話や FAX 、 INS ネット「デジタル通信モード」のサービス提供は終了となり、「光 IP 回線」へと切り替わっていくこととなります。
ここで気をつけておきたいのが、移行手続きにかかる時間です。まだ 1 年以上あるから大丈夫とのんびりしていては危険です。
ISDN 回線の終了と IP 網への切り替えスケジュール |
|
2017 年より | 回線終了の告知開始 |
2021 年 1 月より | 準備の整った契約者の IP 接続の移行が開始 |
2024 年 1 月より | ・INS ネット「デジタル通信モード」サービスの終了
※「通話モード」のみ利用継続可能 ・固定電話契約の一斉切り替えが始まり、新たな料金形態が適応 ・メタルケーブルを利用した通信システム提供の開始 ※移行が間に合わない場合の補完策 |
2025 年 1 月まで | 固定電話の発通話を IP 網へ切り替え完了 |
2027 年ごろまで | メタルケーブルを利用した通信システム(補完策)の終了 |
個人契約の回線の移行であれば良いですが、複数回線や専用端末のシステム更改に時間を要する企業の場合には、移行手続きの混雑するタイミングに駆け込むことなどが無いように、早めに対策を取っておくのが安心です。
総務省による調査報告「令和 2 年版 情報通信白書」では、 2012 年以降、家庭用・事務用ともに ISDN 回線の利用衰退が年々進んでいるのが見て取れます。
こうした利用者の衰退が ISDN 回線サービス終了の一因となっているにも関わらず、実は、現在もなお ISDN 回線の利用を続けている企業は少なくありません。
今やお店やレストランのほとんどで導入されているクレジットカード端末や、病院診療の保険請求、ビルの管理や警備など、日常生活を支えているサービスにも ISDN 回線は使用されています。
こうした暮らしに根付いた事業やサービスのシステムを大幅に変更・移行するのは、企業にとって容易ではなく、その影響は大きいと言わざるを得ません。
企業によっては、システム移行を外注しなければならず、労力やコストの面で移行が進まないといったケースもあり、現場のサービスシステムを停めることなく、全ての企業でのスムーズな移行を完了させるには、段階的な準備が必要となってきます。
経済活動の観点からも、 POS (販売情報管理システム)や EDI (電子商取引)といった、日々稼働している経済活動のシステム移行は、細心の注意を払って進める必要があります。
特に影響が大きいと言われている食品や流通業界、医療や自動車業界では、発注やレジシステム、日々のさまざまなデータの送受信など、どの作業に ISDN 回線や専用端末が使われているのかを明確にしておく必要があります。
万が一、移行手続きに時間がかかり、システムが稼働しないといった状況が起これば、業務を行っている現場は大混乱。それが顧客サービスや取引先に影響する場合には、企業の信頼問題にも関わってきます。
発注書・納品書・請求書などのデータ通信、商品スキャンや在庫管理などのデータ通信システムの移行作業は、時間をかけて対策を行い、現場に混乱が起こらないように注意して進めましょう。
ISDN 回線の終了で影響を受けるのは、企業のシステム部門だけとは限りません。 NTT では、 ISDN 回線終了と同時に提供を終了するサービスがいくつかあります。
短縮ダイヤルや着信用電話、ビル電話などのサービスを利用している企業は少なくないのではないでしょうか。これらのサービスを日々の業務で使用している場合は、 ISDN 回線終了の対策同様、現場での変更・移行の対応が必要となります。
ISDN 回線を利用している企業では、「 2024 年問題」とも言われる程、大規模な回線終了を前に、慌ただしく対応策が話しあわれていることと思います。ここでは、 ISDN 回線終了前に企業がやっておくべきステップを順に解説していきます。
企業がまず確認しておきたいのが、社内で ISDN 回線を用いた INS ネットのデジタル通信モードを利用しているかどうかです。確認方法は 2 つ。
ISDN 回線を使用したシステムがある場合、次に取り掛かりたいのが、代替サービスの検討です。
考えられる代替サービスは以下の 2 つ。
1. IP 化の検討
これまで利用していた ISDN 回線を「光 IP 回線」へ変更する方法です。これにより、データ送受信のスピードが格段にアップするといったメリットがある一方で、専用機器の種類などによっては、これまでの通信速度を下回る可能性も指摘されています。
莫大なコストを要するシステムの変更では、これまでの作業パフォーマンスを落とすことなく、業務が遂行できるのかどうか、慎重に分析をする時間を設けましょう。
2. インターネット EDI (Electronic Data Interchange)の導入
メーカーや卸、小売間の商品受発注データの通信を担う EDI (電子商取引)も、 ISDN 回線終了に大きな影響を受ける業務の一つです。そこで今、注目されているのが「インターネット EDI 」の導入です。
従来の EDI は ISDN 回線からの移行は手間がかかるのがデメリットとも言われていますが、最新のインターネット EDI の導入は、セキュリティやパフォーマンスの面でもメリットが多く、長期的に見ればこの機会での導入が良いかもしれません。
移行が必要なシステムを明確にし、代替サービスが決定したら、いよいよ移行への準備に取り掛かります。
日々の業務に支障が出ないよう、移行のステップやスケジュールをしっかり立てておきましょう。
回線システムの移行に際して、社内だけでなく、社外との通信にも影響が出る場合は、取引先との意思疎通もしておきましょう。
万が一、 ISDN 回線の終了までに移行が間に合わない場合は、 2027 年頃までを目途に、補完策として「切り替え後の INS ネット上のデータ通信」の提供をして貰えるので、NTT 東日本・NTT 西日本に確認をしておきましょう。
ISDN 回線終了は、ただ単に回線を IP 化すればよいというものではありません。ISDN 終了に伴うシステムの更改には、膨大な費用や手間がかかるケースもあります。各企業では、自社に与える影響を分析し、対応案をたてましょう。取引先との意思疎通も忘れずに、余裕をもった移行スケジュールをたてましょう。
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