今日の企業間競争において、カスタマーエクスペリエンス(CX)は差別化を競う戦場とも言えます。優秀なコールセンターとは、もはや単なるコストセンターではなく、戦略的な収益源であることを、多くのリーダーや意思決定者達は認識しています。テクノロジーへの投資は極めて重要であり、AI(人工知能)は、投資対効果(ROI)を大幅に向上するための新たな手段となりつつあります。

本記事では、ROI について考慮すべき 2 つの側面について概説します。バーチャルアシスタントを導入してコンタクトセンターに付加価値をもたらす方法や、具体的な指標を用いて対話型 AI を最も活用できる領域を把握する方法はもちろん、コールセンターにバーチャルアシスタントを導入して目標を達成する手順についても説明します。

ROI の方程式:コスト削減 + 収益創出

コールセンターの ROI はこれまで、コスト削減に重点を置いていました。対話型 AI が画期的である理由の 1 つが、次のように両方を実現できるためです。

  1. コスト削減:バーチャルエージェント(チャットボットと音声ボット)や、AI を活用したオペレーターアシスタントは、日常的な問い合わせを自動化し、電話による問い合わせを回避することにより、オペレーターの作業負荷を軽減できます。適切に導入すれば、対話型 AI により平均処理時間が短縮され、オペレーターの離職率が下がり、コストを大幅に削減できます。
  2. 収益創出:対話型 AI は、電話による問い合わせを回避するだけでなく、バーチャルセールスエンジンとして機能し、リードの選別、さらにはインタラクション中のアップセルやクロスセルの役割も果たします。また、対話型 AI は問題解決を迅速化し、セルフサービスを改善するため、顧客満足(CSAT)やロイヤルティ、リピート率の向上に貢献します。
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対話型 AI テクノロジーを活用したバーチャルエージェントは、コールセンターの ROI 向上に大きく貢献します。ここでは、主なメリットをいくつかご紹介します。

常時稼働のカスタマーサービス:バーチャルエージェントは、カスタマーエンゲージメントの 24 時間化を実現するため、ビジネスの中断はなくなります。顧客はオペレーターの対応を待つことなく、好きなときにいつでもサポートを受けることができます。バーチャルエージェントは基本的な問い合わせに対応し、対人の問い合わせ対応を削減するため、人間のオペレーターは複雑な問題にのみ対応します。その結果、問題解決の時間が短縮され、顧客満足(CSAT)が向上します。

オムニチャネルのアクセシビリティ:バーチャルエージェントは、顧客の所在地に関係なく、どこでも対応できます。メッセージングアプリ、ソーシャルメディア、SMS、オンラインポータルなど、複数のプラットフォームで動作し、シームレスなオムニチャネルエクスペリエンスを生み出します。このアクセシビリティの高さがブランドの信頼を築き、顧客関係をより強固にします。

一貫したブランドボイス:バーチャルエージェントは、ブランド特有のトーンや音声でコミュニケーションするようプログラミングできます。この一貫性により、親近感が生まれ、顧客との信頼関係が促進され、全体的なエクスペリエンスが向上します。さらに、バーチャルエージェントは、推奨製品のパーソナライズにも利用でき、顧客満足度の向上だけでなく、販売促進にも活用できます。

国境を越えたグローバル展開:バーチャルエージェントは、顧客とのインタラクションに多言語で対応できるため、言語の障壁がなくなり、市場の範囲が拡大します。そのため、多言語対応できるオペレーターが不要になり、グローバルなカスタマーエンゲージメントの効率化とコスト効率の向上につながります。

自動化による効率向上:バーチャルエージェントは、ナレッジベースを使用した FAQ への回答、顧客満足度調査の実施、セールスプロセス改善に活かせるインサイトの提供など、定型タスクを自動化できます。その結果、人間のオペレーターは、顧客とのインタラクションや戦略的タスクなど、より価値の高いタスクに専念できるようになり、チーム全体の生産性が向上します。

音声アシスタントを導入することにより、カスタマーサービスの向上、販売機会の拡大、運用コストの最適化を通じて、投資対効果(ROI)が大幅に向上します。

数値で見る対話型 AI のメリット:数字の先に見えるもの

AI(人工知能)の ROI を測定する目的は、単にコスト削減の確認だけではありません。オペレーターの作業負荷が軽減され、電話対応が回避できることは大きなメリットですが、顧客の行動やビジネス全体の健全性にテクノロジーが及ぼす影響を把握することが、真の成果と言えるからです。

数字の先には真実が隠されています。特定の KPI を追跡することで、顧客の行動とビジネス全体の健全性に対するメリットと影響を数値化し、把握することができます。

  • 顧客満足(CSAT)スコア:対話型 AI は、問題解決の時間短縮、待ち時間の短縮、24 時間対応の可用性、インタラクションのパーソナライズにより、CSAT を大幅に改善します。導入後の CSAT の変化を追跡し、顧客満足度の向上を数値化します。
  • ネットプロモータースコア(NPS):満足度の高い顧客がブランド支持者になります。NPS とユーザーの意見を監視し、対話型 AI によるカスタマーエクスペリエンスの向上が、ブランドロイヤルティと支持にどのような影響を与えているかを確認します。
  • セールスコンバージョン率:AI ベースのチャットボットは、リードの育成、見込み客の絞り込み、売上の拡大に寄与することができます。コンバージョン率を追跡して、対話型 AI が収益創出に与える影響と、セールス面のメリットを測定します。
  • 顧客努力目標(CES):顧客満足度を高めるには、円滑なインタラクションが重要です。CES を使用して、顧客によるタスクの完了や回答の発見において、テクノロジーがどの程度プロセスの簡易化に寄与しているかを測定します。
  • 顧客生涯価値(CLTV):顧客満足度が高いほど、その顧客のブランド定着率は高く、購入額も多くなります。CLTV 増大の要因を対話型 AI に直接結び付けるのは難しいかもしれませんが、カスタマーエクスペリエンスの向上と潜在的な CLTV 増加との関連性には説得力があります。

上記の指標を従来のコスト削減データと組み合わせることにより、対話型 AI が収益拡大にどのような影響を与えるかを総合的に把握できます。その全体像を通じて、CAI 導入の継続的な改善と最適化が可能になり、コールセンターの ROI を大幅に高めることができます。

対話型 AI の活用

Genesys Cloud® プラットフォームを利用すれば、バーチャルエージェントの構築は、とても簡単です。ドラッグアンドドロップ方式のインターフェイスは、複雑なコーディングが不要で、迅速な導入が可能です。ただし、対話型 AI の導入を成功させるには、慎重に計画する必要があります。

スムーズに進めるうえで留意すべき点を 3 つご紹介します。

  1. 適切なユースケースを特定:まず最初に、繰り返し発生するタスクを自動化して、オペレーターを複雑な問い合わせへの対応に専念させます。顧客のニーズを把握できるシンプルなユースケース、特にバーチャルエージェントとのメッセージングチャネルによるインタラクション、FAQ、ルーティングの各ユースケースは、出発点として最適です。
  2. カスタマージャーニーを重視:  対話型 AI をカスタマージャーニーにシームレスに統合し、必要に応じて、人間のオペレーターにスムーズにハンドオフできるようにします。対話型 AI は、状況、意図、完全なトランスクリプト、感情分析など、バーチャルエージェントと顧客とのインタラクションに関する詳しい情報をオペレーターに提供できます。
  3. トレーニングに投資:オペレーターと顧客の両者に対し、このテクノロジーを効果的に使用する方法をトレーニングします。バーチャルエージェントが効果的に対話できることは、カスタマーエクスペリエンス向上に不可欠です。そうして初めて、顧客がバーチャルエージェントを最適な方法で利用できるからです。オペレーターも十分にトレーニングを受け、AI から提供されるインサイトと、その活用方法を理解する必要があります。

これからのコールセンター AI ソリューションに求められる要素

クラウドベースのコールセンター・ソリューションは、堅牢なプラットフォームであるだけでなく、対話型 AI の ROI を大幅に向上することが可能です。具体的には以下のようなメリットがあります。

  • シームレスな統合: さまざまな対話型 AI ソリューションとのシームレスな統合は重要です。特に、あるサービスに接続して成果を改善したり、顧客に追加サービスを提供する場合などです。
  • 高度な分析:プラットフォームに包括的な分析機能が備わっているかは重要なポイントです。CSAT、NPS、セールスコンバージョン率などの主要な指標に CAI が与える影響を追跡、測定できるためです。このデータを利用すれば、AI 導入を継続的に改善し、最適化できます。
  • 拡張性とセキュリティ: 拡張性が高く、セキュアなプラットフォームなら、顧客データの安全性を維持しながら、対話型 AI ソリューションはビジネスとともに成長することが可能です。
  • オープン API フレームワーク:オープン API フレームワークは、カスタマイズや他のビジネスシステムとの統合が簡単なため、カスタマージャーニーのパーソナライゼーションや一貫性確保を実現できます。

コールセンターにおける ROI の未来:人間と機械の調和

対話型 AI は、コールセンターの万能薬ではありませんが、コールセンターのパフォーマンスを向上させる強力なツールと言えるでしょう。コスト削減と収益創出の両方を重視することで、投資対効果(ROI)を大幅に向上させ、優れたカスタマーエクスペリエンスの、未来型のコールセンターを構築することができます。

コールセンターにおける ROI の未来は、人間のオペレーターを置き換えるのではなく、人間と AI が調和のとれたコラボレーションを生み出すことです。

人間と AI の理想的なパートナーシップを活用することで、コールセンターは、優れたカスタマーエクスペリエンスの未来を切り開き、ROI を大幅に向上することができます。また、進化し続けるデジタル環境において競争力となります。コールセンターの未来は、人との触れ合いを奪うものではなく、充実させるものです。

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