最新のデジタルエクスペリエンスは、顧客の期待に変化をもたらしています。顧客の期待とは、企業やブランドが顧客のニーズや傾向を理解し、専門性に基づいてインタラクションやエクスペリエンスをパーソナライズすることです。

エクスペリエンスオーケストレーションという手法

最新のデジタルエクスペリエンスは、顧客の期待に変化をもたらしています。顧客の期待とは、企業やブランドが顧客のニーズや傾向を理解し、専門性に基づいてインタラクションやエクスペリエンスをパーソナライズすることです。

しかし、多くの企業がこの期待に応えられていません。業務部門やタッチポイント全体でデータが連携されていないためです。その結果、一貫性のない不適切なカスタマーエクスペリエンスになっています。

カスタマージャーニーとタッチポイントすべてが可視化されていないと、全体的なカスタマーエクスペリエンスに関するインサイトを取得することは困難です。

部門間のデータ分断は、パーソナライゼーションの大規模オーケストレーションにとって大きな障害となります。データベースやシステム、各タッチポイントからもたらされる、顧客インタラクションに関する行動データを連携する作業は、時間と工数を要します。  多くの場合、限られた情報を使用してインタラクションをパーソナライズします。

従来のパーソナライゼーション手法では、往々にして複数のシステムにわたり、複雑なパーソナライゼーションロジックを管理する必要があります。ルールベースのワークフローは、維持と管理に多大な時間と労力を要し、効果的ではありません。

こうしたワークフローはチャネルごとに個別に機能しており、同時進行している他のジャーニーは考慮されていません。その結果、複数のチャネルにわたる顧客インタラクションに最新の状況を反映することができなくなっています。また、顧客に対応するオペレーターは、適切な知識やデータを活用することができません。

消費者の 71% が、インタラクションのパーソナライズを期待しています。提供されない場合は、76% が不満を感じると回答しています。

What is personalization?(パーソナライゼーションとは?)」、McKinsey、2023 年

ここで効果を発揮するのが、エクスペリエンスオーケストレーションです。カスタマージャーニーを深く理解し、適切なテクノロジーを適切なタイミングで導入して初めて、企業はパーソナライゼーションにおいて大きな進歩を遂げることができます。その結果、顧客満足度とロイヤルティーの向上、収益の増加という効果を生み出します。

本ブログでは、エクスペリエンスオーケストレーション戦略の一環である、パーソナライゼーションの重要性を解説します。それでは、詳しく見ていきましょう。

カスタマーエクスペリエンスにおけるパーソナライゼーションの役割

パーソナライゼーションは、企業が顧客のニーズを理解し、顧客を重視している証明とも言えます。顧客は企業やブランドに対し、ロイヤルティーとつながりを感じるためです。顧客はリピーターとなり、その企業やブランドを他の人にも勧める可能性が高まります。

例えば、商品の提案やサービスを個人に合わせてカスタマイズすることで、購入金額が増加します。自分が重視され、理解されていると顧客が感じると、ブランドとのインタラクションが増加し、取引を継続する可能性が高まります。一方で、ブランド離れは低下します。

カスタマーエクスペリエンスのパーソナライズは、カスタマージャーニーを大きく改善し、顧客ロイヤルティーを向上させ、収益にプラスの影響を与えるほどの影響力があるのです。

状況に応じたサポートと、パーソナライゼーションへの影響

顧客とのインタラクションやエクスペリエンスのパーソナライゼーションには、状況に応じたサポートが不可欠です。カスタマージャーニーのマッピングデータをインタラクションの背景情報と紐づけることで、さまざまなカスタマータッチポイントやチャネルで、一人ひとりに合わせた適切なサポートを適時に提供できます。ライブチャットやソーシャルメディア、メールなどもパーソナライゼーションの対象です。

顧客からの問い合わせに対応するだけでなく、関連する製品やサービス、コンテンツの推奨や、問題の効果的な解決を行うことができます。例えば、ライブチャットを使用して連絡してきた顧客に対して、カスタマー・サポート・チームは顧客の購入履歴や傾向、過去のインタラクションにアクセスして、パーソナライズしたリアルタイムのサポートを提供することができます。

ソーシャルメディア・チャネルを使用して、一人ひとりに合わせたコンテンツを提供することもできます。さらに、購入者のペルソナ、関心、現在・過去の行動に基づいて提案を行うことができます。

パーソナライゼーションから新たな可能性を特定する

セグメンテーションは、カスタマーエクスペリエンスのパーソナライゼーションにおける重要なステップです。カスタマージャーニー・データを適切にセグメント化すれば、詳細な分析が可能になり、カスタマーエクスペリエンスの向上やビジネス目標の達成につなげることができます。

各セグメント(顧客層)における特定のニーズや傾向に合わせ、マーケティングキャンペーンやお勧め商品、カスタマーサポートのインタラクションを調整することができます。

顧客セグメント固有の特性を理解することにより、パターン、傾向、新たなビジネスチャンスを特定することもできます。例えば、オペレーターに話すことのみを好むセグメントもあれば、セルフサービスで完結したいと望むセグメントもあります。

パーソナライゼーションの施策と顧客セグメンテーションを連携させることにより、戦略の有効性を大幅に高めることができます。それが最終的に、顧客が共感するパーソナライズされた一貫性のあるカスタマーエクスペリエンスの実現につながるのです。

パーソナライゼーションにテクノロジーを活用

適切なテクノロジーを使えばパーソナライゼーションのプロセスを効率化できるため、エクスペリエンスのパーソナライズを大規模展開することが可能です。会話型、生成型、予測型などの AI(人工知能)を活用したソリューションは、顧客のフィードバックやデータをリアルタイム分析し、パターンを特定することにより、一人ひとりに合わせたお勧め商品などを生成することができます。

同様のレベルのパーソナライゼーションをあらゆるチャネルに適用できます。モバイルアプリもその 1 つで、企業に重要なデータをもたらし、顧客にパーソナライゼーションを提供する重要なタッチポイントになります。

顧客の行動、傾向、購入履歴に関するデータの収集に有利なエンジンと言えるでしょう。収集したデータに基づき、パーソナライズしたエクスペリエンスをモバイルエクスペリエンスとシームレスに連携させることができます。

パーソナライゼーションにより、顧客それぞれの状況に基づいたインタラクションが可能になります。分断された各タッチポイントにおける最新のインタラクションを最適化するだけではないため、大きなメリットがあります。

エクスペリエンスオーケストレーションとは

エクスペリエンスオーケストレーションとパーソナライゼーションの関係

エクスペリエンスオーケストレーションは、人、システム、データをリアルタイムで動的に自動調整することにより、カスタマーエクスペリエンス、従業員体験、各業務を大きく改善します。

収集された顧客情報すべてを取り込むエクスペリエンスオーケストレーションにより、エンゲージメントのあらゆるチャネルで一貫したカスタマージャーニーを実現することができます。プロセスを誘導しながら、一人ひとりにきめ細かく最適化した顧客関係を構築することが可能です。

プロアクティブな意思決定が可能になり、影響度、重要度が高い場面において対策を講じることができます。ジャーニーの改善を優先しながら、カスタマージャーニーにおける重要なステップを最適化して、各顧客の全体的なエクスペリエンスに基づき対策を調整します。

エクスペリエンスオーケストレーションの実践例

エクスペリエンスオーケストレーションが顧客にもたらすメリットについて、レベッカという女性を例に説明します。

レベッカはよく飛行機に乗ります。特定の航空会社をよく利用しており、ロイヤルカスタマーとして「ゴールドステータス」を獲得しています。出張があるため、この航空会社の Web サイトにアクセスし、1 カ月後に出発するビジネスクラスのフライトを予約します。

その後数週間にわたり、レベッカはアップグレードオプションや個人的な休暇の計画などを目的として、ソーシャルメディア、オンラインチャット、チャットボット、電子メールなどのさまざまなチャネルを利用し、航空会社とインタラクションを行います。インタラクションの相手は、営業やカスタマーサポートなど、航空会社の複数の部門です。

フライト当日、航空会社はレベッカに、ゲート変更の SMS メッセージを自動送信します。別の都市が悪天候のため、フライトが大幅に遅れ、重要な会議に間に合わなくなるリスクがありました。そのため、レベッカはカスタマーサポートに電話してサポートを求めます。

この航空会社が従来の技術を使用していたとしたら、オペレーターはレベッカにたくさんの質問をして本人確認を行い、彼女の説明を聞いてから、フライト情報について尋ねる必要があるでしょう。適切なオペレーターにつながるまでに、複数のオペレーターと話さなければならなかったかもしれません。

関連する個人情報とフライトデータや、レベッカが電話をかけてきた理由のすべてにアクセスできるオペレーターはいなかったことでしょう。ゴールドステータスの顧客が緊急の問題を抱えているケースに対応できる、オペレーターもいなかったかもしれません。これは、顧客とオペレーター双方にとって好ましくないユーザーエクスペリエンスです。

最終的にレベッカは失望し、オペレーターはストレスを感じていたことでしょう。次に旅行する際、レベッカは別の航空会社を利用するかもしれません。

しかし、そのような心配は無用でした。この航空会社は、エクスペリエンスオーケストレーション・テクノロジーを導入していました。

Web サイト、ソーシャルメディア、SMS におけるレベッカのインタラクション履歴データすべてが、レベッカの個人データと結合されています。例えば、マイレージプログラムのステータス、チケット情報、遅延したフライトに関するリアルタイムの更新情報などです。それらすべての顧客データがオーケストレーションエンジンに渡されます。

このエンジンは AI を使用して、レベッカと現在の状況を知っている優秀なサービスオペレーターにレベッカをルーティングします。AI が必要な情報をオペレーターに迅速に提供し、レベッカがサポートを受けながら、適切なフライトを予約できるようにするためです。

顧客の状況、オペレーターの空き状況とスキルセットを把握し活用することで、この航空会社は優れた体験を提供できているのです。これは顧客ロイヤルティーの維持にもつながります。

オペレーターと顧客の満足度を向上させる、エクスペリエンスオーケストレーション

デジタル時代の到来で、顧客はほんの数年前は不可能だった方法でインタラクションできるようになりました。ベンダーの乗り換えも簡単になり、できるだけ安価な商品やサービスを見つけて購入することができます。

その結果として、カスタマーサービス、特にカスタマーエクスペリエンスのパーソナライゼーションが大きく進歩しました。パーソナライゼーションとは、単に次の優れたオファーを提示することではありません。サービスの質を向上させ、顧客に多くのメリットを提供するための一要素です。

戦略的にエクスペリエンスオーケストレーションを導入することで、顧客中心の企業は、顧客一人ひとりに対して今現在のインタラクションだけでなく、カスタマーエクスペリエンス全体にわたる最適化を提供することができます。

エクスペリエンスオーケストレーションの詳細では、カスタマーエクスペリエンスのパーソナライゼーションについても解説しています。ぜひご覧ください。