クラシックカルト映画「ネットワーク」の登場人物であるハワード・ビールの発言を真似るなら「怒り狂っているこの気持ちをツイートしてやる!」といったところでしょうか。誰しもがこのような経験をしたことがあります。すばらしい(または酷い)カスタマーエクスペリエンスを提供する企業と出会い、その経験をソーシャルメディア上で共有しなければならないという義務感に駆られたとします。ツイートしたり共有したりするタイプでなくても、ソーシャルメディアを見るだけの人もいます。こうした人物は、初めてブランドの購入を決める前に、オンライン上で製品やサービス、企業に関する顧客レビューを読みます。そして、悪い評判に関するレビューやツイート、投稿の数が多ければその企業を利用する可能性はゼロです。

優れたカスタマーエクスペリエンスを提供することで、オペレーターと顧客のインタラクションに変革をもたらすことができます。対面や音声によるインタラクションは無視しがたいものがありますが、だれでも見ることができるものではなく、内容を知っているのはオペレーターと顧客だけです。対面や音声によるインタラクションはリアルタイムな会話であり、オペレーターが顧客や見込み顧客をサポートして質問への回答や問題の解決、取引の処理にあたります。

しかし、ソーシャルメディア上で行われるインタラクションとなると話は別です。ソーシャルメディア上のインタラクションはより多くの人の目に触れます。好むと好まざるにかかわらず、だれでも見ることができるのです。ただ、ほとんどの場合、企業はソーシャルチャネルを通じて顧客や見込み顧客と接する機会を見逃しています。ブランドロイヤルティーを構築するには、顧客のメンションに反応することが何よりも重要です。

依然として、受け取ったオンラインメッセージのうち企業が反応しているのは全体の半数に過ぎません。その結果、顧客の推奨度が43%低下します。良いレビューでも悪いレビューでも、オンライン上での反応に時間をかけることにより企業に利益をもたらし、ブランドに対する顧客の支持を20%向上させることができます。

Microsoftのレポートによると、企業がソーシャルメディア上で活発に反応することによりブランド認知度が上がると回答したミレニアル世代の割合は74%にのぼります。そして、反応するスピードが早いほど良い結果につながります。投票した人のうち66%が、24時間以内の反応を期待しています。

ソーシャル空間で良い印象を確実に与えるには、ポジティブな意見とネガティブな意見に対応するためのルールと推奨アプローチを含めたソーシャルメディア用ベストプラクティスを用意しましょう。

ツイート、いいね、ハッシュタグの追跡
質の高いソーシャルメディア用ルールを作るための第一歩は、どのような人物が自社について発言しているかを把握することです。それには、誰がどのチャネルで何を言っているかを調査するソーシャルメディア監査を実施します。さまざまなソーシャルメディア・チャネルで監査を実施することにより、多岐にわたる顧客フィードバックを引き出すことができます。まずは、InstagramやTwitter、Facebook、さらにはTikTokでタグ付けされている自社の名前を検索してみましょう。

トレンドとインフルエンサーに注目しましょう。自社ブランドのハッシュタグを頻繁に使っているアカウントを見つけたら、そのアカウントをフォローしてみてもよいでしょう。サイズ感や組み立て方、環境への取り組みなど、特定の質問について複数のインタラクションを見かけたら、そうした質問に答えるための、専用のソーシャルメディア・チャネルを開設してみるのもよいかもしれません。

HootSuiteやTweetDeck、Sproutなどさまざまなツールを使ってソーシャルチャネルを常に監視し、すべてのインタラクションを把握することもできます。また、ソーシャルメディアに精通した人物を雇って、コメントの監視と返答を行う専任の担当者になってもらうことを検討してください。

ソーシャル対応
ソーシャルチャネル上で顧客がどのようにして自社ブランドについて発言しているか特定できたら、それに反応していきましょう。Social Media Todayによると、ソーシャルメディア上の苦情に回答しない企業から購入する可能性が低くなると回答した消費者の割合は88%にのぼります。しかし、適切な反応を行うのは簡単ではありません。ボットのようにならずに素早くフレンドリーに対応する必要があります。

複数の顧客に同じ回答をしてもパーソナライゼーションを実現することはできず、顧客も自分が大切にされたり評価されていると感じることができません。そして、より慎重に扱うべき質問の場合、ダイレクトメッセージの方が適切な場合があります。顧客に連絡先メールアドレスを伝えることにより、顧客が直接企業に連絡して問題を解決したり個人情報を共有したりできます。

オンライン小売企業Zapposでは、投稿後1時間以内に、ときにはユーモアを添えて顧客のコメントに反応しています。このようにしてオンライン上でパーソナライゼーションを行うことにより、ソーシャルメディアに詳しいユーザーのなかで自社ブランドを差別化しています。

カスタマーエクスペリエンスへのソーシャルの導入
優れたカスタマーエクスペリエンスとは、顧客を大事に扱うことだけではなく(大事に扱うことももちろん重要です)、企業と顧客とのインタラクションをより簡単なものにすることです。58%の人が、ソーシャルメディアによりカスタマーサービスが利用しやすくなっていると回答しています。

カスタマーエクスペリエンスの改善は一夜にして達成できるわけではありません。クラウド・コールセンターへの移行から従業員エンゲージメントの改善まで、入念に練られた戦略をいくつか用意して、顧客と見込み顧客が希望するどのチャネルでも企業と連絡できるようにする必要があります。優れたカスタマーエクスペリエンスを実現するにはソーシャルメディア戦略が重要な役割の一部を果たします。