「データ分析」と「エクスペリエンスオーケストレーション」という 2 つの概念は、AI ベースの最新機能を構築する上でその重要性は高まっています。この 2 つの概念は、包括的な戦略の一部として相互に補完しながら、カスタマーエクスペリエンス向上とビジネス目標達成に欠かせない要素となっています。

データ分析とインサイトは、カスタマーエクスペリエンスをオーケストレーションするための動力となります。人工知能(AI)は、こうした大量のデータを処理し、AI ベースのルーティングやボットなどのエクスペリエンスオーケストレーションを自動化する「筋肉」と言えます。

データ分析とエクスペリエンスオーケストレーションを組み合わせることで、顧客の理解を深めることができます。顧客のニーズをリアルタイムで予測し、エクスペリエンスを向上して、ビジネスの成長と成功を促進することが可能になるのです。そして最も効果的、最適なタイミングでアクションを実施することができます。

本ブログでは、データ分析をエクスペリエンスオーケストレーション戦略の一部として組み込み、有用なインサイトを取得して、ビジネスの価値を高める方法について解説します。さらに、カスタマーエクスペリエンス(CX)全般を向上させ、ビジネス成果を達成するうえで、この 2 つの概念がなぜ重要なのかについて見ていきます。

エクスペリエンスオーケストレーションにおけるデータの役割

データこそが、カスタマーエクスペリエンスの基盤

カスタマーエクスペリエンスの分析なしに、エクスペリエンスオーケストレーションを達成することはできません。分析情報を活用して初めて、顧客とのインタラクション、トランザクション、ソーシャルメディアなど、あらゆる種類のデータソースから貴重なインサイトを取得することができるのです。

取得したインサイトは、エクスペリエンスの向上、プロセスとワークフローの最適化、製品とサービスの向上に不可欠です。CX を分析してカスタマーサービスを向上できる企業は、競争力を維持できます。

データ分析では、機械学習やデータマイニングなどの高度なテクノロジーを使用します。これらのテクノロジーを活用することで、関連するすべての顧客タッチポイントとデジタルチャネルのデータを収集して分析し、顧客の行動、嗜好、意図を把握することができます。

エンゲージメントの瞬間に顧客の行動に関するインサイトを取得することで、パターンを明らかにし、今後の行動を予測することが可能になります。こうしたテクノロジーを活用して意思決定に役立つ情報を取得すれば、ビジネス目標を達成することができます。

顧客が望むパーソナライゼーションも実現することが可能です。

エクスペリエンスオーケストレーションとは

エクスペリエンスオーケストレーションは、顧客のエクスペリエンスすべてを反映した、エンドツーエンドのパーソナライズアプローチです。リアルタイムのカスタマージャーニー分析とインサイトを過去の行動と組み合わせ、AI を活用してエクスペリエンスを向上します。

例えば、カスタマージャーニーを可視化して、顧客の目的(特定の製品を探している、サポートを求めている、決済をするなど)を把握できます。こうしたインサイトを活用することで、あらゆる問題を解決し、目的を達成できるように顧客をサポートすることができます。

最新のカスタマージャーニー・マッピング・テクノロジーと分析ツールによって必要なインサイトを取得し、カスタマーエクスペリエンスにおけるすべてのインタラクションを顧客ロイヤルティーに変えることができます。インタラクションすべてが顧客の目標と嗜好に基づいており、高度にパーソナライズされます。

カスタマーエクスペリエンスと従業員エクスペリエンスの両面で、戦略的な考え方と言えます。

全体的なビジネス成果を向上させつつ、カスタマージャーニーを効率化できるためです。AI アルゴリズムは、こうしたプロセスの中で大量のデータを分析し、人が見落としたり、迅速に対応できないパターンや意図を特定します。リアルタイムに行われるため、今現在の顧客ニーズに応えることができるのです。

データ分析でカスタマーエクスペリエンスを向上

CX 分析を活用することで、完了しないインタラクションに即座に対応できるだけでなく、長期的な戦略の計画や更新も可能になります。プロセスを最適化することで、目標を達成することができます。

カスタマージャーニー分析データを活用できる分野をいくつかご紹介します。

パーソナライゼーション:カスタマーエクスペリエンス・データを収集・分析することで、顧客の嗜好、行動、ニーズを深く理解することができます。データをもとに、個々の顧客に合わせてエクスペリエンスをパーソナライズし、顧客満足度とエンゲージメントを向上させ、顧客離れを抑制することができます。

細分化:分析を活用して、顧客層、行動、嗜好別に顧客ベースを分類することで、ターゲットを絞ったマーケティング施策が可能になります。また、特定の顧客セグメントに合わせて製品、サービス、コミュニケーションをカスタマイズし、関連性の高いコンテンツによってエクスペリエンスを向上させることができます。

予測分析とインサイト:データ分析により、行動パターンや傾向を明らかにし、情報に基づいて顧客の行動を予測することができます。また、問題を予測して対応、適切な提案を行い、カスタマーエクスペリエンスをさらにスムーズにすることもできます。

フィードバック分析:レビュー、アンケート、ソーシャルメディアにおけるインタラクションなど、顧客からのフィードバックを分析することで、顧客の感情、満足度、問題点を可視化します。これらのフィードバックを活用して、改善すべき分野を特定し、顧客の懸念に迅速に対処し、全体的なエクスペリエンスを向上させます。

感情分析:テキスト/音声分析によって顧客の感情を把握することは、顧客の声を把握するために重要な要素です。このプロセスでは、AI 自然言語処理を活用して、インタラクション全般において顧客がどのように感じているかを把握します。

リアルタイムの意思決定:顧客データをリアルタイム分析することは、アジリティの実現にとって必須です。顧客ニーズや市場動向の変化に、迅速に対応することが可能になるためです。

最適化:顧客データを継続的に分析することで、カスタマージャーニーにおけるボトルネック、非効率、摩擦点を特定できます。プロセスを最適化し、障害を取り除くことで、インタラクションを効率化できます。

競争優位性:顧客の期待以上のエクスペリエンスを提供することは、企業にとって競争力を意味します。顧客を惹きつけ、ロイヤルティーの高い顧客を維持することを意味します。手段の 1 つとして、ソーシャルメディアにおけるブランドや業界に関する会話やトレンドを監視する方法が挙げられます。

データ分析によって顧客の期待を上回る

コールセンターで顧客を適切なオペレーターにつなぐことは、ユーザーエクスペリエンス向上のために極めて重要です。ただし、これは必要な要素の一部に過ぎません。

ポジティブなエンゲージメントとは、一回限りのインタラクションで顧客の問題を迅速に解決することだけではなくなっています。エクスペリエンス全体をオーケストレーションすることが重要なのです。

データ分析で従業員の業務を効率化

任意のチャネルで顧客がブランドにリーチすると、カスタマーエクスペリエンス・プラットフォームがそのリクエストを、自動システム、セルフサービス・ボット、ライブオペレーターにルーティングします。しかし、オペレーター(場合によってはシステム)が、カスタマージャーニー全体を把握できる機能は不足しています。

こうした情報を、ブランド独自のシステムから(過去の購入や返品など)、また外部から(オンライン検索や広告への反応など)得ることができます。

個々のエクスペリエンスを解決するために必要な背景が提供されないと、カスタマーエクスペリエンスが低下し、オペレーターがストレスを感じることが少なくありません。サービスを向上するには、あらゆるインタラクションにおいて、カスタマーサポート・チームが最新の顧客情報にアクセスできる必要があります。

さまざまなシステムの CX データには、顧客に関する個人情報や過去の背景情報が含まれています。そうした情報を顧客とのインタラクションすべてに組み込むことで、適切でパーソナル、プロアクティブなインタラクションに変えることができます。適切なデータと知識を入手することで、総合的戦略の一環としてエンゲージメントすべてをオーケストレーションできます。

ビジネスシステムやプロセスにかかわらず、権限を持つすべてのユーザーがデータを瞬時に、自動的に利用できるようになれば、データを視覚化して監視できます。背景情報を含んだカスタマージャーニー・データがオペレーターのデスクトップに表示されるため、有用なインサイトを利用できます。データはオペレーターの分析ソースにもなります。

こうした背景情報を念頭に置いて、オペレーターは顧客の意図や要望を即座に理解することができます。こうしたスピードと効率性は、顧客を満足させるだけでなく、従業員エンゲージメントや仕事の満足度の向上にもつながります。

導入事例:データドリブンのエクスペリエンスオーケストレーション

エクスペリエンスオーケストレーションの業界別事例をいくつかご紹介します。

  • 小売企業は、購入サイクルのあらゆる時点でキャンペーンに関する事前通知を送信できます。例えば、取引の途中で在庫に変化があった場合、在庫が少なくなっていることをポップアップで顧客に通知して、注文プロセスをリマインドすることができます。ショッピングカートに商品を登録したままにしている場合は、顧客が希望するコンタクトチャネルで別のタイプの通知を送信するといったことも可能です。
  • 医療機関は、次回の予約、再診のスケジュール、処方薬の補充期日などの自動リマインダーを送信できます。データドリブンのオーケストレーションによって、新しい処方薬を同じプロファイルの既存の薬剤と照合して、副反応について患者に事前に警告することもできます。
  • 金融サービス機関は、複数の金融商品ポートフォリオにまたがるクライアント情報を統合したり、口座状況に基づいてサービスを提案することができます。エクスペリエンスオーケストレーションによって、銀行業務、クレジットカード、ローンなど、複数の事業部門間でサービスを調整することもできます。消費行動を分析すれば、事前に不正アラートを出し、カードの交換を早めることも可能です。

一歩先を行くための、データドリブン・エクスペリエンスオーケストレーション

高度なテクノロジーの統合が進む中、多くの企業が顧客視点のサービスを進めるようになっています。データドリブンの適切なインサイトと AI を組み合わせることで、顧客データを収集して、効率性、顧客ロイヤルティー、成長の面で、多くのビジネスメリットを得ることができます。

データを活用してエクスペリエンスを魅力的に差別化できる企業だけが、激しい競争を勝ち抜くことができるでしょう。

データ分析はこれからのビジネスに必須

分析は、エクスペリエンスオーケストレーション戦略に不可欠です。データソースを 1 つのプラットフォームに集約して分析を行うメリットは、顧客に関する詳細なインサイトだけではありません。

分析によって、データエキスパートからアナリスト、オペレーター、ビジネスユーザーに至るまで、組織のあらゆる部門を支援し、個々のカスタマーエクスペリエンスを調整して最適化し、ビジネス成果を向上させることができます。最終的に、顧客とより強固な関係を構築し、顧客生涯価値を大幅に高めることができます。

ビジネスデータの量は増える一方です。データを活かしてカスタマーエクスペリエンスを最適化する手段について、もう一度検討してみてはいかがでしょうか。

エクスペリエンスオーケストレーションによってビジネス成果を向上させる方法について、ぜひご一読ください。