銀行業務とワークフォースエンゲージメント:将来に備えて

過去数年間、銀行はボットに投資してきました。期待される投資効果として一般的なのは、コール数の大幅な削減でした。 しかしデータから、必ずしもこうした期待通りの効果が得られない事が分かってきました。 ボットが簡単な質問を処理するため、オペレーターはパスワードのリセットや、資金移動などの定型作業に忙殺されなくなりました。 しかし、オペレーターはより複雑で困難な問い合わせを処理しなければならず、完了までに時間がかかるようになりました。

このような複雑な電話に対応するために、オペレーターは、ハード・ソフト両面において、より高いスキルが求められています。 スキルアップは、従業員エンゲージメントを大規模にサポートする上でますます重要になってきています。

銀行業務の変化に備える

新型コロナウイルス感染症によるパンデミックが発生した際、銀行は直ちに数千人のオペレーターを在宅勤務体制に移行する必要がありました。 これは、テクノロジーと経営戦略転換の観点からはかなりうまく機能し、顧客の混乱を最小限に抑えることができました。 現在の銀行における課題は、長期にわたってリモートワーカーの関心とモチベーションを維持することです。 コンタクトセンターで仕事をしたことのない新人のオペレーターを募集する銀行もあります。 銀行は、こうしたオペレーターのトレーニングに加え、新しい製品の知識や、高い期待に対応するスキルを向上させる必要があります。 どの業界でも同じような変化が起きていますが、銀行ではライセンス要件や規制の遵守があるため、一層複雑です。

この解決策として、柔軟性の向上に直結する自動化推進とプロセスの簡易化があります。 オペレーターの在宅勤務における集中力を妨げないためにも必要です。 また、企業には適切な規模で運用を行うための柔軟性が必要です。これは財務の健全性にとっても重要です。

ボットをはじめとしたデジタルテクノロジーに投資をしている場合、それらを活用して多くの改善が可能です。 次の 4 つの重点分野に取り組むことで、オペレーターの支援体制を整え、より効果的なエンゲージメントをサポートします。

1. 音声分析とテキスト分析

コンプライアンスと規制の問題から、銀行が顧客とやり取りする際、高度なスクリプト化が必要とされます。 やり取りを監視するために、マネージャーは通常、通話の一部を聞いて、その内容を報告します。 この手動プロセスでは有益な情報が得られますが、音声分析を使用すれば、さらに迅速かつ効果的なプロセスを構築できます。 例えば、法令、規制、業務上の義務に応じてトピックやフレーズを定義することで、コンプライアンス上の責任を明らかにできます。 すべてのやり取りを監視することで、コンプライアンス違反、財務的影響、評判失墜のリスクを軽減できます。

音声分析とテキスト分析を基に実用的なデータを見つけることで、重要な KPI を特定できます。

電話やデジタルチャネルを介して取得される膨大なインタラクションデータからは、顧客やオペレーターが体験したことに関する洞察を得ることもできます。 音声分析テキスト分析は、品質管理プロセスや方法論と連動しているため、それぞれの対話から意味や洞察を容易に引き出すことができます。 また、傾向や共通のテーマを特定することで、AHTの削減FCRの向上売上へのコンバージョン向上など、特定のユースケースにおけるエージェントパフォーマンスの向上に活用することができます。

感情分析はデータを分析し、顧客からのフレーズが肯定的、否定的、中立的のいずれの状態であったかを、感情マーカーで表示します。 このデータを多角的に分析することで、オペレーター個人やコールセンターのパフォーマンスを確認でき、何が改善につながるのかを知ることができます。

2. コーチング

従来、コーチングは、エージェントとマネージャー間の 1 対 1 のコミュニケーションを意味していました。 これは、オペレーターが顧客とのやり取りを処理するための特定スキルを開発し、向上させるのを支援することを目的としています。 コーチングの自動化によって、これまで非公式やランダムに行われていた個人的なコーチングを強化するものです。 10 人のオペレーターでも 1 万人のオペレーターでも、個別に対応できるため、よりターゲットを絞った効果的なコーチングが可能になります。

スーパーバイザーは、オペレーターと顧客のやり取りをより深く理解することで、パフォーマンスの傾向、指導や強化の対象となる行動を特定し、継続的に改善していく文化を構築できます。

効果的なコーチングでは、現在より先の将来に目を向けて、長期的にオペレーターのパフォーマンスを向上させるスキル、態度、行動に焦点を当てる必要があります。

Smarter call-center coaching for the digital world

McKinsey & Company

オペレーターのパフォーマンスを向上させるための評価基準を提供する学習モジュールに焦点を当てます。 コンテンツには、各役割の具体的な目標を設定し、オペレーターにそれらを達成するためのリソースや推奨事項を提供する必要があります。 これらの情報は、オペレーターのオンボーディング時に使用でき、その後各自の役割における成長に合わせて継続していきます。

自動コーチングにより、よりポジティブな活力を生み出すことができます。スーパーバイザーは、オンサイトリモートの従業員に対して、ポジティブな行動を評価して報酬を与え、必要に応じて、トレーニングやフィードバックのセッションを計画することができます。 これを AI(人工知能)を使用して行うと、プロセスが高速化され、コーチングが完了するまで管理されるため、管理者の負担が軽減します。

3. ゲーミフィケーション

2 年前、在宅勤務している銀行員の割合は 10% 程度でした。 今では約 80% が、物理的には銀行の環境とは無縁の状態で働いています。 ゲーミフィケーションは、オペレーターが組織とお互いのつながりを維持し、新人オペレーターのオンボーディングを促進するための優れた手法です。

KPI をゲーミフィケーションに取り入れることで、オペレーターが楽しく働き、互いに切磋琢磨することができます。 パフォーマンスベースの測定基準により、オペレーターの意欲を高め、パフォーマンスを管理して追跡し、目標を達成するための評価を提供することができ、専門的な能力開発を促進できます。 このデータを活用して、明確なコーチング計画を策定し、学習する文化を作り、公正さと透明性を促します。 また、プロセスや手順の変更を簡易化するためにも利用できます。

まず、オペレーター全体にとってどのようなデータが最も有用であるかを決定し、AI 主導のパフォーマンス目標を使用して、能力開発をカスタマイズします。 オペレーターが自分の仕事の成長に関与することを奨励することにより、生産性が向上します。 先進的なネイティブゲーミフィケーション技術があれば、それを容易に実現することが可能です。

4. エージェントアシスト

オペレーターが関連情報の検索に費やす時間が増えるほど、顧客との関係を構築する時間が少なくなります。 AI を活用したナレッジの推奨エンジンーいわゆるエージェントアシスト機能は、実際の人間のオペレーターが顧客からの問い合わせにリアルタイムで回答できるように支援します。 これらのエンジンは、各会話の状況に基づいて自動的に推奨回答を表示します。

最適なエンジンには、オペレーターに特定の問い合わせに対する推奨回答がどの程度正確かを示す信頼スコアが含まれています。 信頼度の低い推奨回答を無視するかどうかは、オペレーターの判断に委ねられます。 この知識と有用性を構築するために、オペレーターに各推奨回答について支持か不支持かを投票してもらいます。 これを行うことで、時間の経過とともに、機械学習によって推奨回答の関連性と精度が向上し、オペレーターの作業効率が高まっていきます。

結論

仮想支店、高度な自動化、リモートワーク戦略に関する議論など、業界は進化しており、ビジネスリーダーは新たな課題に対応しなければなりません。

  • 銀行の支店、業界のベストプラクティス、GDPR などの規則や規制への準拠にどのような影響を及ぼすのか?
  • スタッフのトレーニング、知識の共有、業績の報酬の付与をどのように行うのか?
  • コミュニケーションのスクリプトはどのように変化するのか?

銀行業務は急速に進化しています。 今後数年間に、さらなる変化が必要になります。 長期的な成功に向けて、どのように対応し何が必要か、今から準備を進める事が重要です。