保険商品をオンラインで購入することを選択した消費者は、他のデジタル取引と同様に、プロセスがシンプルで、直感的、迅速であることを期待しています。 契約の細かな点を確認したいと考える人はほとんどいません。 迅速かつシンプルなプロセスを求めて、多くの人がオンライン保険会社に直接アクセスするのはこのためです。 しかし、多くの保険会社は、こうした顧客の好みに対応するデジタル能力を備えていません。
The Digital Insurerによると、保険契約者の68%がオンライン取引を望んでいます。 しかし、商品やサービスの見積をデジタルで提供できる保険会社は50%未満、取引や販売をデジタル処理できる保険会社は35%未満です。 保険請求プロセスにデジタルを取り入れている保険会社は、わずか23%です。 一方で、知識が豊富な保険契約者はデータへのアクセスや情報の透明性を期待しており、このことが業界を超えたデジタル変革を推進しています。
保険会社は、カスタマイズされた価値とサービスで差別化を図り、新たな機会を活用して顧客ロイヤルティーを向上させる必要があります。 今こそ、保険会社に対する認識を、共感的なアドバイザー、顧客の擁護者へと変えましょう。
保険会社が保険契約者のロイヤルティーを構築する3つの方法
顧客は、自分が何を求め、何を期待しているかを明確に理解しています。 顧客のニーズに対応するには、商品や文化における俊敏性、合理化されたインテリジェントなプロセス、あらゆるインタラクションにおいて共感をサポートする革新的なテクノロジーを活用できるエコシステムが必要です。 目標は簡易化とつながりです。
すべては、顧客との関係を構築することから始まります。そして、その関係基盤を自動化や人工知能(AI)などツールを活用して強化しましょう。
1.自動化により運用効率とエンゲージメントを向上
自動化とセルフサービスを通して、プロセスを簡易化しましょう。 プロセスを自動化することにより、時間のかかるやり取りを経なくても、新しい保険契約のリクエストを引き受けることができます。 請求についても同じことが言えます。 市場の競争は激しさを増しており、数週間も時間をかけることは不可能です。 ボットの使用を含む自動化は、最も拡張性に優れる手段であり、運用効率を高めてコストを削減することができます。
実際、人間のオペレーターだけでは、柔軟性の高いオンデマンド保険を大規模に提供することはできません。 しかし、これは、AIにより進化した自動化によって可能になりました。 引き受けや請求などの主なプロセスを自動化、つまり「デジタル化」することにより、運用効率を上げるだけでなく、新しい方法で顧客をサポートすることも可能です。
購買ライフサイクル全体を通してセルフサービスの利用を優先する消費者が増加しています。 EYによれば、80%以上の顧客が問い合わせにデジタル/リモートチャネルを利用したいと回答しています。顧客は、オペレーターや仲介業者を介して保険会社とやり取りをするのではなく、Webチャット、メール、モバイルアプリ、ビデオ、電話で直接やり取りしたいのです。 チャット、メール、メッセージングアプリなどのテクノロジーを提供すれば、顧客はより迅速にアクセスすることができます。 これらのテクノロジーは、ボットに任せられるシンプルで、繰り返しの多いジョブを多数生成します。 十分なトレーニングを受けたボットに通話を転送すれば、安定した品質で24時間365日サポートを提供することができます。さらに、ボットは、セルフサービスアプリケーションでも使用することができます。
「ボットのトレーニングにオペレーターを参加させましょう。顧客対応の最前線にいるオペレーターは、ボットが最も効果的な状況についてよく理解しています」
自動化により、顧客の行動が変化した場合でも、継続的に最先端のエクスペリエンスを提供する柔軟性が得られます。 自動車保険について考えてみましょう。 在宅勤務により走行距離が減少したにもかかわらず、ほとんどの人は同額の自動車保険料を支払っているため、それを不公平だと感じている可能性があります。 解約を防止するため、走行距離に応じた保険を提供する企業が増加しています。
モノのインターネット(IoT)デバイスに接続するAIの増加に伴い、走行距離に応じた保険商品の人気が急速に高まっています。 運転データの収集を自動化して更新時の保険料を設定したり、安全運転に対して割引を適用したり、インサイトを利用して顧客に事前通知を送ることなどが可能です。 従来の保険会社は、ベンダーと提携してこのような新しい保険商品の構成要素を提供しています。
2. カスタマーエンゲージメント・チャネルの統合
デジタルチャネル全体にまたがる、つながりの強いエクスペリエンスについて検討するタイミングが早いほど、その作成は容易になります。 システムがサイロ化されていると、迅速かつ正確な意思決定ができなくなります。 しかし、オムニチャネルアプローチを採用することにより、これらの障壁を排除できます。 メッセージングアプリなど、顧客からの問い合わせ手段が増えるにつれ、顧客に関する情報を一目で把握でき、リアルタイムで情報が更新される単一ビューの価値は高まります。
例えば、顧客がWebサイトにアクセスし、チャットまたは電話で情報を求めた場合は、その一連のインタラクションから自動的にデータを取得できます。 顧客プロファイルを継続的に収集していけば、より関連性の高い製品を提供できるようになります。 また、顧客行動に関する統合されたデータとインサイトにより、急速に進化する市場に適応するために有利な位置を確保できます。
3. 差別化要因としての共感
共感とは、話を聞いてもらえている、覚えてもらえている、理解されていると顧客が感じられるようにすることです。 顧客は、プロセスを過度に複雑にしている企業や、自分のことを覚えていない企業をすぐに見捨てます。 プロセスの自動化や、音声チャネルとデジタルチャネルの連携を行うと、保険契約者や見込み顧客への理解を深めるための基盤が確立し、 顧客とのやり取りや、商品・サービスのカスタマイズが可能になります。これにより積極的に顧客へ働きかけることもできるようになります。 これにより、単にリスクに対応をするだけではなく、積極的なアドバイザーとしての立場から、リスクを事前に回避するためのサポートを顧客に提供することができます。 例えば、10代のドライバーが安全に運転するためのヒント、自宅が水害に遭わないためのヒント、スマートテクノロジーを使用してホームセキュリティーを向上するためのヒントなどを送信することができます。
共感の重要な要素は、問題をオペレーターへとエスカレーションする道筋を示すことです。 ストレスの多い場面では、ボットのように迅速かつ正確な回答を提供するだけでなく、共感も示してくれるオペレーターとのやり取りを望む顧客が多くなります。 多くの場合、保険の請求は衝撃的な体験を伴います。 顧客が共感とサポートをもらえる人とつながることができない場合、信頼は危険にさらされます。 しかし、オペレーターと話をするために、急いでいる顧客を長時間待たせることは得策ではありません。
顧客や見込み顧客がだれで、どこから問い合わせをしているのかを確認したら、AIはその情報から次のアクションを予測します。 適切なタイミングで、適切なチャネルで、適切な情報を用いて、顧客と関わる際には共感が会話の中心になります。
関係の再考
顧客は簡単でポジティブな気分になれる体験を期待しており、その期待は年々高まっています。 ブランドに対する顧客の忠誠心を当たり前のものと考えてはいけません。 一度獲得すればいつまでも離れないだろうというのは、甘い考えです。 デジタルチャネルにおける競合他社のプレゼンスを調査し、自社を差別化する方法を見定めましょう。
保険業界は岐路に立たされており、企業の存続など様々な重要課題を抱えています。 今こそ、パーソナライズされた価値とサービスを通じた新しい方法で、顧客ロイヤルティーを再構築する真の変革のときです。